南アフリカで最も評価が安定している生産者の一つ、MULLINEUX/マリヌーの入り口的セカンドライン
自然酵母発酵、茎ごと発酵させる全房発酵を多用するナチュラルよりな醸造を好む。乾燥、高温という凝縮感のあるブドウ作りにもってこいな気候。土壌は花崗岩/頁岩/片岩に分かれておりこのワインはそれぞれをブレンドしてつくられている。このワインではシラーをベースにサンソー、ティンタ・バロッカ、グルナッシュをブレンド。
2023は例年より冷涼であったため収量こそ落ち込んだものの、その分凝縮感がありつつもエレガントな味わいが期待できるグッド・ヴィンテージ。
ワインにはまったものの、フランスは高い…そんなときに目を向けて欲しい新世界のトップ生産者が送る万人受けするフレッシュな魅力あふれるお手頃ワインです!
実飲!
1日目~3日目
抜栓!色は比較的透明感のある明るいガーネット。香りにわずかに還元臭。スワリングすると消える。黒系果実とスパイス感。味はカシス、渋みのある柑橘、ハーブ、僅かにコショウ、酸はスッキリとしていて鼻に抜ける。タンニンは思ったより強く、舌に残り、収斂感がある。余韻は短い。グラスにそそぎ1時間後、酸がより爽やかに。タンニンも少しほどけフレッシュ感が増す。ブルーベリー、黒鉛、鼻にハーブが抜ける。スワリングすると、黒鉛と血のニュアンスのミネラルがよりはっきり感じ取れる。1日目で感じ取れる魅力をまとめると、黒系果実のしっかりしたフレッシュさ。それをスパイスのニュアンスが引き締め、ハッキリしたミネラルが支える。イメージは、乾いた大地。強い日差しが降り注いでいる。井戸水が支える、まばらに根付く力強い緑。
2日目、冷蔵庫から出したボトルからグラスに直接注ぎ、20分間なじませる。1日目よりはるかに香りが立って、スミレのようなフローラルなアロマと黒鉛の締まった香りが広がる。酸が柔らかく滑らかに、タンニンもより細かく、フィネスが感じられる。全体的に爽やかな印象が強まる。余韻も長引き、血のニュアンスが優しく口の中に残る。2日目は、1日目のイメージの前景に白い花々が加わった印象。
3日目、若干弱り始めを感じたため、丁寧に室温になじませ、少し高めの温度で飲む。ラズベリーのような赤系果実の香り。口に含む。一拍後、驚くほどフローラルなアロマが口の中で輪郭を伴って大きく広がっていく。その後、酸と渋みのフィネス、果実の甘味。余韻に心地の良い渋みや苦みが長く残る。2日目がこのワインの青年期だとしたら、今は壮年期への移行期間。フレッシュネスに衰えはなく、第3アロマは香らず、老いの印象はまだない。一方で、若すぎるという印象もなく、エネルギッシュな円熟感がある。コショウのニュアンスは、全体に溶け込み、引き立て役に回る。黒鉛はなりを潜め、血のニュアンスがすこし前に出てきている。3日目はイメージ自体は2日目とさほど変わらない。すこし赤い果実が白い花々の中に見える。
4日目
激変。色は明るいガーネットから、紫寄りに変化。フローラルな印象が消え、酸を感じさせる黒系果実の抑え目な香りが鼻の奥に直接届く。味には落ち着きが出て、甘味は奥に隠れ、ブドウの渋みに確かに潜む旨味が感じられる。全体的に枯れ感がでてきて、ワインのピークは過ぎている感覚があるが、歳を召したことにより、これまでになかった妖艶さを纏う。昨日までの、乾いた大地のイメージは全くなくなり、春、まだ僅かに寒さが残る雨の森、煌びやかだが、派手過ぎない黒いドレスを着た妖艶な美女がたたずみ、こちらを振り返っている。ミステリアスな雰囲気を纏った情景が浮かび上がる。
温度が上がると、果実の甘味もすこし前に出てきて、全体的な情景はそのまま、美女がほほ笑んだイメージ。
最後の1杯。ボトルクーラーのおかげで、まだ少し冷たい。注ぎ香る。驚いた。脳髄の奥まで震わす、甘く官能的な香り。さっきまでとは全く違う、3日目までの若々しさが戻ったように果実味にあふれる。20分おいてなじませ、もう一口。香りにスパイスと渋みが混じり妖艶でミステリアスな官能、蜂蜜のねっとりとした甘みが現れる。
まとめ
つくづく、ワインという飲み物の奥深い魅力には驚かされる。2日目にピークを感じ、3日目には確かにその延長線上の衰えを感じた。とてもフレッシュで美味しいが、どこか単調で、はっきり言えばじっくり味わい、対話する相手としてはどこかつまらない印象を覚えた。しかし、4日目に全く違った顔を見せてくれた。同じワインとは思えない、このようなビッグサプライズが時たま現れ、飲み手をワインの魅力でつかんで離さない。ワインは値段じゃないと再確認した。
このワインは、手の届きやすい価格に対しとても美味しく、飲みやすいため、ついつい急いで飲んでしまいがちだが、できることなら、焦らずゆっくりとこのワインの変化を追いかけてみて欲しい。きっと、まれにみる感動を見せてくれることだろう。
